不動産投資ローンの借入限度額は?住宅ローンとの違いも解説

「不動産投資を始めたいけど資金がない」
「サラリーマンでも数千万円の物件を購入したい」

不動産投資を始めようと思っている人でこのような悩みを持っている方は多いと思います。

不動産投資をするためには十分な資金が必要です。
例えば利回り7%の物件で年間100万円の利益を出すためには1500万円の物件を購入する必要があります。
しかし、投資用物件の購入費用を簡単に工面出来る人はほとんどいません。(というか自己資金でやるメリットがない)

そこで、多くの場合は資金を銀行などから融資を受ける不動産投資ローンを利用します。

不動産投資ローンは住宅ローンとは異なり不動産投資専用のローンなので上手く使えばサラリーマンでも数千万の物件を購入することができるようになります。
不動産投資ローンにはその他にも色々なメリットががあるので不動産投資ローンについて特徴を住宅ローンとの違いなども含めて解りやすく解説したいと思います。

目次

不動産投資ローンとはどんなローンか

まずは不動産投資ローンの主な特徴について解説します。
これから不動産投資を始める人にとっては、非常に大切な予備知識になりますのでしっかりと押さえておきましょう。

ローンの目的

金融機関の融資を受ける時は目的をハッキリとさせなければなりません。教育目的には教育ローンがありますし、自家用車購入の場合にはマイカーローンがあります。融資を受けるためには目的を明確にする必要があるのです。仮に、融通してもらった資金を別用途で使うならば、場合によっては詐欺行為と見なされてしまいます。
さて、不動産投資ローンの目的は何になるのでしょうか?
ずばり、その名の通り不動産投資目的です。
投資目的なので同じ不動産でも住宅ローンとは異なります

具体的には投資用物件の調達や借り換えが目的になります。
尚、ローンの用途を細かく見ると投資用不動産にも「アパート」「マンション」などの不動産の条件も出ていますので目的にあったローンを探す必要があります。

不動産投資ローンの利用可能な金額

不動産投資ローンはアパートやマンションなどを取得するためのローンなので、利用可能金額も住宅ローンに比べ高額で1~2億円のレベルとなっています。
ただし、利用可能な金額は、対象となる不動産の価値や、利用する人の職業や年齢などによって変わる場合もあります。

  • 住宅ローンよりも高額のローンを申し込み出来る
  • 対象物件の価値によりローン金額が左右される

ローン金利

次にローン金利について取り上げます。
一般にローンには固定金利と変動金利がありますが、不動産投資ローンにも固定金利と変動金利があります。利子は複利で発生するので、ローンの期間が長ければ、それだけ返済金額のトータルが増えます
金利は金融機関によりますが概ね2~6%です。

ローンの期間

ローンの期間は金融機関によって違いますが、35年までのところもありますが、20~25年くらいで設定しているところが多いです。
ローンの期間が長い場合、月々の返済金額が抑えられるメリットがあります。しかし、利息は複利で発生します。
そのため、利子の支払いを考えるならばローン期間が長くなればそれだけ増えるので、それだけ多く金融機関に支払うことになります。

※不動産投資で借りた利息は経費で計上できます

担保について

不動産投資ローンの担保は基本的に借入対象となる不動産となります。ですから、例えば、アパートを取得して不動産投資を始める場合には、取得したアパートそのものが担保となります。

返済は2種類の方式

不動産投資ローンの返済は2種類あります。「元利均等」と「元金均等」です。
この内、元利均等は毎月の返済額が均一となる返済方式です。利息は返済額に含まれますが、ローン開始直後が利子の割合が多く、後半になるにつれて利子が減って元金の返済部分が増えます。
ですから、例えば5000万円を借りた場合、返済額が毎月20万円とすると、最初は利子分が5万円で元金分が15万円、後半は利子分が1万円で元金が19万円…というイメージとなります。
一方、元金均等は毎月の元金返済が均等で、利息がその上に乗るイメージとなります。ただ、利子はローン開始直後が金額が多く、後半になるにつれて減って行きます。

※図を入れられれば入れる

不動産投資ローンのメリット

不動産投資ローンのリットについて紹介します。

自己資金を残しながら投資が出来る

最初に挙げられるメリットとしては、自己資金を残しながら投資が出来る点です。
利息が勿体ないからと言って自己資金を投資物件につぎ込むのは万が一資金が必要な時にキキャッシュが回ら無くなる恐れがあるのでお奨めできません。

その点、不動産投資ローンを利用すれば自己資金を確保しながら、大きな投資物件を狙うことができるので安全に投資が出来るようになります。

自己資金より大きな金額を投資出来る

次に挙げられるの、自己資金より大きな金額を投資出来る点です。
例えば、株式投資の場合、自己資金が1000万円ならば投資金額も1000万円までです。しかし、不動産投資であればローンを組むことによって、自己資金が1000万円であっても、2000万円、物件によっては億単位の投資が可能となります。
投資金額が多いということは同じ利回りであればそれだけ多くの利益を得ることができます。

団体信用生命保険を利用出来る

不動産投資ローンはケースにもよりますが、団体信用生命保険の利用が可能です。そのため、仮に借り入れた人に不慮の出来事があったとしても、保険によって残りの返済分が充てられて、不動産を残すことが出来ます。

不動産ローンのメリット

  • 自己資金を残すことができる
  • 自己資金よりも大きな額を投資できる
  • 万が一の場合にも不動産を残すことができる

不動産投資のデメリット

では、デメリットには何があるのでしょうか。

金利が高め

不動産投資ローンの金利は高めに設定されています。後述しますが、住宅ローンとは金利が明らかに違います

審査が厳しい

不動産投資ローンは審査が厳しめです
これも後述しますが、審査には本人の状況だけでなく、物件についても見られます。収益性まで審査対象になるのです。
逆に言えば優良な物件であれば審査が通りやすくなるとも言えます。

物件に抵当権が設定される

不動産投資ローンを利用すると、物件に抵当権が設定されます。そのため、仮にトラブルが発生した場合には、物件を失う危険性もあります

不動産投資ローンのデメリット

不動産投資ローンのデメリット

  • 金利が高め
  • 審査が厳しい(物件による)
  • 抵当権が設定される

不動産投資ローンと住宅ローンとはどう違うか

不動産の購入を考えるならば住宅ローンを思い出すこともあるかも知れません。
それでは、不動産投資ローンと住宅ローンではどこが違うのでしょうか
投資用の不動産を購入するのに間違って住宅ローンを組んでしまうと契約違反などになることもあります
間違った知識にならないようにここでは不動産投資ローンと住宅ローンの違いについて説明してきたいと思います。

使用目的の違い

不動産投資用ローンと住宅ローンの一番の違いは使用目的です。住宅ローンは個人が使用するために(居住)組むローンで使用目的は個人の消費になります。
これに対して不動産投資ローンは収益が発生するために事業目的になります。
消費目的と事業目的では金利、返済期間、税金、審査基準などに違いがありますので注意しましょう。

借入限度額の違い

不動産投資ローンの場合は一般的には年収の10〜20倍を借りることも可能です。
住宅ローンの場合は年収の5倍が一般的な融資額になります。

金利が違う

前述の通り、住宅ローンはマイホーム取得を目的としたローンで、不動産投資ローンは不動産投資の物件取得などを目的としたローンです。ですから完全に性格が異なります。不動産投資ローンは事業用の融資とも言えるのです。
さて、住宅ローンと不動産投資ローンは金利が異なります。概略になりますが、住宅ローンが0.5~2.0%であるのに対して、不動産投資ローンは2~6%になります。
金利が違うからと言って住宅ローンを不動産投資で使うことは出来ません。

期間が違う

不動産投資ローンは住宅ローンと返済期間も違います
住宅ローンを見てみると35年のパターンが多く用意されています。フラット35などはその代表格と言えるでしょう。
その一方で、不動産投資ローンは住宅ローンと違って35年もありますが、20~25年程度が多いので、ローン期間は短めであると言えます。

住宅ローン 不動産ローン
金額 年収の5倍程度 年収の10〜20倍
金利 0.5〜2% 2~6%
返済期間 ~35年 ~25年
担保 あり あり

税金が違う

ローンによって税金が違う…と聞くと、もしかしたらピンと来ない人もいるかも知れません。しかし、住宅ローンの場合は税制の優遇措置が取られていて、大きなメリットを受けられるのです。
これは住宅ローン控除による物で、所得税からローンの残高の1%が戻って来る制度です。そして、この制度は10年間適用されます。
具体的には、仮に4000万円でローンを組んだとすると、最初の年の分で所得税から上限で40万円が返って来ます。そして、次の年にはローンの残高に応じて…例えばローン残高が3820万円(月15万円返済)の1%の38万円が戻ります。これが10年間続くのですから、節税効果は大きいです。
(尚、本記事の執筆時点では、この控除の期間が新型コロナによる特例で13年となっています。)
その一方で不動産投資ローンの場合には、この様な大きい控除はありません。ですから、税制面で不動産投資ローンは不利です。

事業報告をしなければならないこともある

住宅ローンの場合には基本的には自分の仕事についての報告義務はありません。
しかし、不動産投資ローンの場合は様相が違います。それは事業の報告を金融機関にしなければならない場合があることです。また、仮に金融機関が義務が設定して無かったとしても、報告を積極的にすることによって、融資の条件が良くなる場合もあります。
金融機関サイドとしてはローンの返済が滞ることは困ります。そのため、不動産投資家の事業の状況を知ることは重要です。事業報告はそれらの懸念に対応する物で、パイプを太くするツールであるとも言えるでしょう

不動産投資ローンの利用上の注意点

ここでは不動産投資ローンを利用する上での注意点について取り上げます。

審査について

不動産投資ローンの審査は借り入れる人の収入、勤続年数、貯金などに加えて、物件の価値も見られます
また、それに加えて先に挙げた担保も審査に含められます。当然ながら資産価値の無い物などでは、審査の通らない可能性が高くなります。
ちなみに、建物には法定耐用年数という帳簿上の耐用年数が、建物の構造別に決められています。この帳簿上の耐用年数はローンの審査にも大きく影響します。そして、仮に耐用年数が無い場合には、建物の状態が良くても審査は通りにくくなってしまいます。

自己資金について

住宅ローンの場合は今でこそ少額の自己資金でも大丈夫ですが、昔は2割とも言われていました。
さて、不動産投資の場合ですが、事業によっては非常に少ない自己資金でも大丈夫ですが、物件価格の2~3割が一応の目安です。
ただし、金融機関は状況によっては自己資金ゼロでも対応してくれます。ただ、この場合は過去の実績があり、金融機関の評価が高いなど、特別の条件が必要です。

保証人はどうなるか

連帯保証人が必要となるケースが多いです。
ただし、団体信用生命の利用によって連帯保証人の必要が無くなる場合があります
尚、連帯保証人が金融機関から求められるケースとしては、勤務先が小規模の場合や勤続年数が短い場合、また、見込める家賃収入に対して返済額が多い場合や物件の収益性が低い場合などに求められます。

不動産投資ローンで知っておきたいこと

不動産投資が住宅ローンと違うこと、そして注意点などについて分かったことと思います。
ただ、他にも知っておいた方が良い予備知識もあります。ここではその様な予備知識について紹介します。

あくまでも事業用融資であることを覚えておきたい

不動産投資未経験の人は、ローンと聞くと住宅ローンやマイカーローンなどしか知らないケースが多いことと思います。そのため、不動産投資ローンもそれらのローンと同じ様に捉えている人も多いことでしょう。
しかし、不動産投資ローンはその様なローンでは無く、あくまでも事業用の融資であることを覚えておくべきです。
例えば、先に挙げた様に、事業報告書は金融機関によっては必要無い場合もあるかも知れません。しかし、事業の状況を金融機関に知っていてもらえば、借り手として有利になることもあります。
尚、事業用融資である限り、銀行としては滞ることの無い返済を望みます。ですから、銀行側が安心して貸せる様な対応をしておくことが非常に重要です。

複利計算の仕組みを知っておきたい

不動産ローンの金利が住宅ローンよりも高めになることは、前に述べた通りです。それでは、金利と利子の関係はどうなっているのでしょうか。
金利と利子の関係を知っておくことは大切です。複利計算のイメージが掴めていれば、利子の発生のイメージが分かり、資金管理に有用だからです。
さて、複利計算は基本的に「元金に利子が付き、その付いた利子に更に利子が付く」イメージとなります。悪い言い方をすれば「雪だるま式」です。返済金額は直線的にでは無く、曲線的に上昇します。

ローンの利息は経費になる

ビジネスには経費が付き物です。例えば紙やペンを買った費用は経費となります。そして、利益を計算する時は収益から経費として紙やペンの費用を引き、その金額を利益とします。
不動産投資の場合でも、全体の収益の中から物件のメンテナンス費用などの経費を引いた額が利益です。
さて、不動産投資の場合、経費は物件のメンテナンス費用などの物理的な物だけではありません。不動産投資ローンの利息も経費となるのです

資産価値の無くなった不動産はローンが利用しにくい

ローン審査の際に、金融機関は物件の収益性が無い場合には審査が通りにくい点を述べました。
それでは、資産価値の無くなったとはどの様な物件でしょうか。
これには駅からの距離や建物の状態などもありますが、「建物の耐用年数」が大きなポイントとなります。
それでは、建物の耐用年数はどの様に決められるかが疑問になりますが、これには法定耐用年数が用いられます。建築物は法的に一応の耐用年数が定められており、それによって価値が決まります。そして、これは新しい建物が高く、古くなるにつれて価値が減ってしまいます。そして、価値は最後にはゼロとなります。この状態だと不動産投資ローンは利用しにくくなるのです。

住宅ローンで投資物件を買うとどうなるか

投資用物件を住宅ローンで買ってはいけないことは前述の通りですが、…そこを仮に強行して、住宅ローンで投資用物件を買うとどうなるでしょうか。

「バレないから大丈夫」とは考えてはいけない

まず第一に覚えなければならないのが、銀行はあくまでも信用を第一にするビジネスパートナーであると言うことです。そして、お金を融通してくれるのも信用があってはじめて成立することを忘れてはいけません。
ですから、「バレてないから大丈夫」というスタンスで銀行と付き合うならば、いずれ良く無い結果を生むのは目に見えています。銀行とは誠意をもって付き合うことが大切です。

不意なことでバレることも多い

では、住宅ローンを利用して投資用物件を買った場合、どの様な状況でバレることがあるのでしょうか
いくつかのシチュエーションがあるのですが、例えば発送された郵便物が届かなかったケースや、近所を通りがかった銀行営業マンの訪問からバレるケースなどもあります

バレたらどうなるか

この行為は詐欺と見なされることもある行為なので、負うペナルティは非常に大きいです。場合によっては、融資した額の一括変換を要求して来る場合もあります。そのために自己破産まで追い込まれる可能性も、やはりあります。
いずれにせよ、銀行とは仲良くしていくことが得策です。重要なビジネスパートナーとして付き合いましょう。

不動産投資ローンQ&A

不動産投資ローンについて取り上げてきましたが、ここでは、よく聞く疑問についてQ&A方式で解説します。

Q.不動産投資ローンは個人でも借りられる?

個人でも利用が可能です。ただし年齢制限があります。例えば借入時が20歳以上、または最終返済時の年齢に制限を加えている金融機関もあります。

全国どこの不動産でも利用が可能?

金融機関によって変わって来ます。国内であれば全国対応のところ、首都圏、近畿圏、名古屋周辺…と言ったエリアに制限を掛けているところなど。金融機関への確認が必要です。

Q.住宅ローンを借りていても別で借りる事ができる?

仮に住宅ローンを組んでいたとしても、不動産投資ローンは併用が可能です。理由は、2つのローンは別物だからです。
また、両者では金融機関に問われる物も違います。住宅ローンの場合は借主の返済能力が、不動産投資ローンの場合は物件の収益性などが焦点となります。
ただし、併用する場合には、不動産投資ローンの利用可能額に制限が加えられる時もあります。

Q.年収、仕事別の借りれる金額などはどのくらい?

これは完全にケースバイケースです。不動産投資ローンは年収や仕事の属性が審査対象にもなりますが、それに加えて担保となる投資用不動産の価値にもよるからです。また、金融機関によっても不動産投資に積極的なところもありますし、それほど注力していないところもあるからです。
ただし、審査に関しては、仕事の属性や年収が多い方、そして勤続年数の多い人が有利になります。

Q.仮に自分がローンを組んだ後で死亡した時には、投資用不動産とローンはどうなるの?

基本的には保証人が引き継ぐことになりますが、団体信用生命保険に入っていれば、保険でローンの残債が支払われるので、ローンは無くなり、投資用不動産は相続者に残ります。

Q.繰り上げ返済は出来るの?

繰り上げ返済は可能です。ローンの負担を減らす上で有効な手段と言えます。ただし、手数料が掛かる場合があるので注意が必要です。
また、ローンの負担が有利になるという理由で繰り上げ返済に手持ち資金を回し過ぎると、物件の破損などの不測の事態に陥った場合に資金が不足する事態もあり得ます。繰り上げ返済にも計画性が必要と言えるでしょう。

まとめ

不動産投資ローンについて解説しました。住宅ローンとの違いなどについても把握出来たことと思います。また、住宅ローンで投資用物件を購入しようとする行為の危険度なども分かったことと思います。
投資用物件を購入するのは、自宅の購入とは完全に違います。銀行とは良い関係を持って、健全なビジネスをすることが大切です。

不動産投資ローンの頭金については「不動産投資の頭金の割合は3割って本当?頭金なしは危険!?」で詳しく解説しています。