投資用マンションを売却するタイミングとは?
投資用マンションを売却するときは、「買った時よりも高く売りたい」と思うのが一般的な投資家心理と言えるでしょう。
しかし、実際多くの投資用マンションで売却するタイミングを間違えた結果、売却による損失が生じてしまうケースも少なくありません。
そこで本記事では、投資用マンションをベストなタイミングで売却するために不可欠なポイントや方法、費用や税金について解説します。
目次
投資用マンションの売却に最適なタイミングとは?
自身で保有する投資用マンションは、オーナーであるご自身のタイミングで売却を検討することが可能です。したがって、最適なタイミングを見極めることが、投資用マンションを高く売却するためのコツと言えます。
以下では、投資用マンションの売却に最適なタイミングについて具体的なケースを交えて解説します。
相場の上昇によるキャピタルゲインが狙えるとき
投資用マンションの相場価格が上昇傾向にあり、売却によってキャピタルゲインが狙えるタイミングは売却に最適なタイミングと言えるでしょう。
キャピタルゲインとは、保有している資産の価格が値上がりすることによって得られる利益(差額)分を指します。
不動産の相場価格は、国税庁が発表する土地の公的価格を示す路線価から確認することが可能です。仮に路線価が上昇局面にある場合は、実際の取引においても高い価格で売却できる可能性が高いため、投資用マンションの売却に最適なタイミングと言えます。
大規模修繕を行う前
投資用マンションなどの建物は、築年数に応じて経年劣化してしまいます。
したがって、建物の劣化を改善させるには、定期的に適切なメンテナンスをおこなったり、大規模な修繕を実施する必要があります。
しかし近年では、建設ラッシュに伴う工事費用相場の上昇や、修繕積立金の不足、マンションオーナー間での合意形成ができず、必要以上に費用や労力を費やすケースも珍しくありません。
そのため、不要な工程や負担を軽減させるためにも、大規模修繕を行う前に売却を検討することで、無駄なキャッシュアウトをすることなく売却することができます。
購入から所有期間が5年を超えているとき
投資用マンションの所有期間が5年超か5年以下かによって、売却時に発生する譲渡所得にかかる税率の軽減措置を受けることが可能です。
具体的には、売却する年の1月1日時点で所有期間が5年超であれば「長期譲渡所得」、所有期間が5年以下であれば「短期譲渡所得」に分類されます。
長期譲渡所得と短期譲渡所得の税率は次の通りです。
譲渡所得区分 | 所有期間 | 所得税の税率 | 住民税の税率 | 合計 |
長期譲渡所得 | 5年以上 | 15.315% | 5% | 20.315% |
短期譲渡所得 | 5年未満 | 30.63% | 9% | 39.63% |
投資用マンションをできるだけ高く売るためには、所有期間も大切な要素になります。
したがって、よほどの理由がない限りは長期譲渡所得が適用される5年超を待って売却を検討するようにしましょう。
デッドクロスになる前
デッドクロスとは、減価償却費が年間のローン元金返済額を上回る状態のことを指します。
デッドクロスの時期に突入すると、上回った金額は経費に計上することができない現金支出に該当するため、帳簿上の利益は黒字になりますが、実際の手元資金目減りしてしまいます。
その結果、帳簿上の黒字に対する課税額が増加し、キャッシュフローがマイナスに転じるため、ローンの返済や税金の支払いが困難になり「黒字倒産」を招く恐れもあります。
そのようなリスクを避けるために、減価償却費が年間のローン元金返済額を上回る前に投資用マンションを売却する必要があります。
築年数が20年を迎える前
投資用マンションの価値や成約価格は築年数によって変動します。
とくに築年数が経過するほど、不動産価格が下がり、売れにくくなるものです。
そこで売却するタイミングの基準となるのが築20年と言われています。
東日本不動産流通機構の「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2019年)」*1の調査によると、築20年以下の中古マンションの成約率が上昇傾向にあるのに対し、築20年を超えると成約率が横ばいであるだけでなく、成約価格が築16年〜20年の建物と比較して1000万円ほど下落するなど、資産価値の低下が見られます。
また築20年前後には建物の大規模修繕や排水設備の交換など、大きなキャッシュアウトが発生する時期に重なるため、築20年を迎える前に売却を検討するようにしましょう。
マンションを高く売却する方法については「マンションを高く売却する4つの方法とポイント」でさらに詳しく解説しています。
投資用マンションを売却する流れ
投資用マンションを最適なタイミングで売却するためには、事前に売却するまで流れを知っておくことが重要です。
以下では、投資用マンションを売却するまでの手順について解説します。
①売却したい時期に合わせて事前に計画を立てる
投資用マンションの売却にあたって、あらかじめ売却したいタイミングに合わせて計画や準備を行う必要があります。
投資用マンションの売却は、活動を始めてから概ね3ヶ月〜6ヶ月の期間を要すると言われています。したがって、売却する直前で準備をはじめても、売却したいタイミングで契約できない場合があるため、あらかじめ売却したい時期から逆算して計画を立てるようにしましょう。
また計画を立てる際は、以下の項目に分類して検討するようにしましょう。
周辺の相場を調査する
不動産の相場価格は、既に販売されている不動産情報から所有物件に類似する条件を打ち込むことでおおよその市場価格を調べることが可能です。
希望条件を整理する
購入価格や自信が希望する売却価格などをあらかじめ条件として整理しておくことも重要です。この基準が曖昧だと、不動産会社の言われるがままの価格や売却時期に設定されてしまうおそれがあります。
したがって、事前に希望価格や売却完了の期日は明確にしておきましょう。
必要書類の用意
投資用マンションの売却に必要は書類は次の通りです。
- 自身の身分証明書
- 実印及び印鑑証明書
- 住民票
- 登記済権利書または登記識別情報
- 固定資産税納税通知書または固定資産税評価証明書
- 物件の概要書(マンションの管理規約またはそれに付随する書類など)
- 売買契約書
- 間取り図
②不動産会社に売却・査定の依頼をする
投資用マンションを売却する際は、適正な不動産価格を知るために、1社ではなく複数の会社に依頼するようにしましょう。
また投資用マンションの売却は、一戸建てや分譲マンションの売却とは異なり、不動産投資や税金対策などの専門知識が必要になります。
したがって、複数の不動産会社に査定依頼をする場合、これまでの取り扱い実績や売却した案件を加味して依頼をお願いするようにしましょう。
③査定結果を踏まえて媒介契約を結ぶ
不動産会社からの査定結果を踏まえて、不動産会社に仲介を依頼する媒介契約を結ぶ必要があります。
媒介契約には3つの種類があり、それぞれ違った特徴を有しているため、自身の投資用マンションの内容にあった契約を選ぶようにしましょう。
一般媒介契約
一般媒介契約とは、複数の不動産会社と媒介契約を結ぶ方法です。
一般媒介契約は、指定流通機構(レインズ)への登録義務が任意であることをはじめ、販売状況の報告がない、契約期間は3ヶ月などの特徴があります。
多くの人の目にとまる可能性がある一方、積極的な販売活動を促せない点や、買取保証がないなどのデメリットがあるため、物件に応じて使い分けるようにしましょう。
専任媒介契約
専任媒介契約とは、不動産会社1社と媒介契約を結ぶ方法です。
専任媒介契約は、不動産会社からの状況報告の頻度が2週間に1度以上行う義務があるため、一般媒介契約と比較して積極的な売却活動を促すことができます。
また専任媒介契約では、自分で買い手を探して売買契約を結ぶことも可能です。
専属専任媒介契約
専属専任媒介契約とは、専任媒介契約と同様、特定の不動産会社1社と媒介契約を結ぶ方法です。専任媒介契約と異なる点は、不動産会社からの状況報告の頻度が1週間に1度受け取れるため、より積極的な売却を行うことが可能。
④購入希望者の物件案内
投資用マンションの購入希望者が見つかれば、不動産会社に同行して物件の内覧対応も行います。この際は、投資用マンションとして訴求できる点を購入希望者にアピールすることが重要です。したがって、物件案内の際にアピールできる箇所を説明できるように準備しておきましょう。
⑤売買契約の締結
購入希望者と条件交渉をおこない、双方の合意を得られた場合は、売買契約を締結することになります。このとき、購入希望者より手付金を受け取ることになります。
⑥物件の引渡し及び決済
引き渡し日までに抵当権抹消に関する手続きや各種書類の準備をおこないましょう。
購入者から残金の支払いを受領し、それと引き換えに売却物件に関する書類一式及び鍵の受け渡しをおこないます。
そのほかにも、売主側も法務局にて所有権の移転登記や、固定資産税の精算などをおこない、物件の引き渡しが終われば売買契約は完了になります。
投資用マンション売却に必要な費用
投資用マンションをスムーズに売却するためには、あらかじめ必要な費用を知っておくことが重要なポイントです。
以下では、投資用マンションの売却に必要な費用について解説します。
仲介手数料
仲介手数料とは、不動産売買や賃貸借の契約締結に伴い、仲介業務をおこなった不動産会社に支払う金銭のことを指します。仲介手数料は宅地建物取引業法により定められた上限が設定されており、以下の計算式(速算式)で算出することができます。
{(売却金額×3%)+6万円}×消費税率
法令で定められているのはあくまでも上限額のみのため、上限額以内であれば、不動産会社が自由に仲介手数料を決めることが可能です。
自由に決められるということは仲介手数料は交渉次第で安くすることが可能です。
不動産会社に対する仲介手数料は下記の通り定められています。
売買価格 | 計算式 |
200万円以下 | 売買価格×5%+消費税 |
200万円〜400万円以下 | 売買価格×4%+消費税 |
400万円超 | 売買価格×3%+消費税 |
抵当権抹消の手数料
ローンを組んで投資用マンションを購入することで、金融機関から抵当権が設定されます。仮に売却することでローンを完済すれば抵当権を抹消することが可能です。
抵当権抹消の手続きで発生する手数料の相場は、自分で行うか、司法書士に依頼するかで異なりますが、おおよそ1,000円から15,000円程度が相場になります。
投資用マンション売却で生じる税金とは
投資用マンションの売却の際に利益が出た場合については、それに応じて税金を納める必要があります。
以下では、投資用マンションの売却で生じる税金について解説します。
譲渡所得税
譲渡所得税とは、不動産の売却金額が不動産の購入金額を超えて利益が生じた際に、その利益分から売却時に発生した譲渡費用を差し引いた金額に課税される税金を指します。
譲渡所得は以下の計算式で表すことができます。
譲渡所得=売却価格-(不動産取得費+譲渡費用)
また譲渡所得の税率は、譲渡した年の1月1日現在において、所有期間が「5年超」または「5年以下」によって税率が変動します。
印紙税
印紙税とは、日常生活の経済取引に伴って発生する一定額以上の契約書や領収書などの特定文書に課税される税金を指します。
以下では、不動産の譲渡に関する契約にかかる印紙税の一覧になります。
記載金額 | 本則税率 | 軽減税率(令和4年3月31日まで) |
50万円〜100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円〜500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円〜1,000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 |
1000万円〜5,000万円以下 | 20,000円 | 10,000円 |
5,000万円〜1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 |
1億円〜5億円以下 | 100,000円 | 60,000円 |
5億円〜10億円以下 | 200,000円 | 160,000円 |
10億円〜50億円以下 | 400,000円 | 320,000円 |
消費税
投資用マンションの売却は消費税の課税対象に該当します。
消費税法上、土地等を譲渡または売却する場合は非課税の取引に分類されているため、
個人・法人問わず課税対象にはならないものの、投資用マンションなどの建物は課税対象に含まれます。
したがって、消費税の納税義務に該当する「個人事業主」や「法人」などで投資用マンションを売却する場合は、消費税の納税をおこなう必要があります。
不動産売却時に掛かる経費、税金は「マンション売却にかかる税金はいくら? 税金控除や確定申告、計算方法」で詳しく解説しています。
投資用マンションの売却には確定申告が必要
投資用マンションを売却することで利益が出た場合には、サラリーマンでも個人事業主でも確定申告が必要になります。
通常、サラリーマンが受け取る給与所得に対する確定申告の計算は会社が年末調整をしてくれますが、不動産投資などの損益に関する確定申告は自分で税務署に申告することになります。
確定申告が不要なケースも
しかし、投資用マンションの売却によって損失を被った場合に関しては、必ずしも確定申告をおこなう必要はありません。ただし、売却損が発生した場合でも、確定申告することによって、税金が還付される特例を受けられることもあるため、仮に売却損があっても必ず確定申告するようにしましょう。
確定申告に必要な書類
確定申告に必要な書類は次の通りです。
- 確定申告書第一表・第二表(B様式)
- 申告書第三表(分離課税用)
- 譲渡所得の内訳書
- 登記簿謄本
- 建物及び土地の登記事項証明書
- 不動産を取得・売却した際の資料(売買契約書、全部事項証明書、仲介手数料の領収書など)
投資用マンションを売却する際の注意点
投資用マンションを売却する際は、売却するタイミングや業務フローだけでなく、売却する際の注意点を考慮する必要があります。
以下では、投資用マンションを売却する際の注意点について、押さえるべきポイントを絞って解説します。
複数の不動産会社に査定を依頼する
投資用マンションを売却する際は、簡易査定を1社だけに依頼するのではなく、複数の不動産会社に依頼するようにしましょう。
仮に1社だけに査定を依頼すると、本来、不動産が持つ価値や適正価格を知ることができなかったり、不動産会社によっては得意不得意のエリアが違ったり、取扱実績の有無、物件の種別などが異なるため、必ずしも価格が類似するとは限りません。
したがって、より適正な価格で投資用マンションを売却したのであれば、不動産一括サイトなどを活用して、複数の不動産会社から査定価格を提示してもらうようにしましょう。
入居者がいるタイミングで売却を検討する
投資用マンションの購入希望者は、入居者による家賃収入が主な収益源になります。
したがって、入居者が多い投資用マンションは、そうでないマンションと比較して高く売れる傾向があるため、入居者がいるタイミングで売却するようにしましょう。
仮に入居者が居なくても、すぐに空室が埋まる物件であれば、空室のままでも問題ありませんが、次の入居者が見つかりにくい物件であれば、物件としての魅力や優位性が低下している可能性があるため注意が必要です。
そのため、投資用マンションの売却を検討する際は、できるだけ満室の状況または入居者がいるタイミングで売却するようにしましょう。
競合する物件が少ない時に売却する
投資用マンションの売却価格を左右するのは、家賃収入や投資対象としての魅力の有無などが関係しますが、そのほかにも、競合する物件が少ないなどの希少性や優位性も売却価格の高低に大きく影響を及ぼします。
仮に過去の売買実績が少ないエリアや投資用マンションが少ない立地で売却を希望するのであれば、希少性や競争優位性の観点からより高いキャピタルゲインを得ることが可能です。
したがって、売却を検討する際は、自身の投資用マンションに目を向けるのではなく、競合する物件や近隣の売買動向にも気を配るようにしましょう。
ローンの残債がある場合は注意が必要
投資用マンションを売却する際は、ローンの残債があっても物件を売却することは可能です。しかし、仮に売却費用がローン残債を下回る場合、売却費用にプラスして自己資金を使ってローンの残債を完済しなければなりません。
投資用マンションにおける利益とは、ローンや経費、税金の支払いを差し引いた残金が最終的な利益に該当します。
そのため、ローンの残債がある場合は、不動産価格や近隣の相場に注視しつつ、いかにローンの残債を減らしつつ売却することができるかを検討するようにしましょう。
まとめ 投資用マンションの売却には戦略的計画が不可欠
投資用マンションを高い価格で売却するためには、購入時点から戦略的に計画を立案する必要があります。
特に適正なタイミングで売却したいのであれば、経済情勢や市況などの情報といった全体像だけでなく、売却までの流れや費用、売却によって生じる税金の支払いなど、細やかな箇所にも気を配ることが重要です。
不動産投資における出口戦略は、最も大切と言われる工程と言えます。
投資用マンションの売却を検討されている人は、一度売却までの流れや費用を把握するだけでなく、専門知識を有する不動産会社に相談するようにしましょう。