不動産投資で賢く節税!個人、法人どこまで経費になるの?

不動産投資を節税目的で始める人もいます。サラリーマンや自営業者の収入に対して課税される所得税などの税金を、不動産所得によって軽減できるのです。しかし、不動産投資での節税は、仕組み自体を正しく理解していないと、上手に節税できず不動産投資も失敗する確率が高くなります。よって今回は、不動産投資で賢く節税する方法と、その仕組みを解説します。

投資物件はどんなものが良いのか

投資物件はどんなものが良いのか

まず、不動産投資するにあたり、どんな物件に投資すれば成功の確率は上がるのでしょうか。ここでは節税しやすい物件について紹介します。

節税しやすい物件とは

不動産投資で節税しやすい物件の種類は、マンション投資とアパート投資です。両者は、サラリーマンや自営業者が始める投資として人気です。理由は、多くの投資商品の中でも比較的身近であり、本業が忙しくても副業として検討できるからです。また、管理できる会社も多く、長期的な資産運用として検討する人も多いのです。

マンション投資

マンション投資は、比較的手軽にできる投資商品です。ワンルーム一室からマンション1棟まで投資商品はさまざまですが、個人で行うのであればワンルームマンションが定番です。マンション投資のメリットは、入居者が続く限り、家賃収入が安定的に見込めるので収支計画が立てやすいことです。デメリットは、空室リスクがある、修繕等による維持管理コストが高などが挙げられます。しかし、他の投資商品に比べて長期的に収入が得られ、更に節税効果もあるのです。

アパート投資

アパート投資は、まるまる一棟所有する形が一般的です。新築で建設する場合の初期費用は、ワンルーム投資に比べて掛かります。まずは土地探しからで、更にアパートも建設するので経営開始までに時間が掛かります。したがって、資金と時間に余裕が必要です。しかし、アパート投資のメリットは、長期的な収入が確保できる、年金代わりになる、初期費用が多いので節税効果があります。

不動産投資での節税方法

不動産投資 節税
ここからは不動産投資で節税する仕組みを解説します。尚、不動産投資の節税のキーワードは「確定申告」「損益通算」「減価償却」です。これらを理解することで、賢くて正しい節税をすることができます。

損益通算をする

損益通算とは、赤字の所得を黒字の所得から差し引くことです。つまりサラリーマン場合、給与等で得た所得から、不動産所得で赤字が出た場合に相殺できるということです。例えば給与所得が500万円で、不動産所得が100万円の赤字であれば相殺し、年間所得400万円になります。年間所得が、損益通算することで少なくなるので、年間所得に掛かる所得税や住民税が少なくなります。尚、損益通算できるのは、不動産所得の赤字・事業所得の赤字など限られています。尚、不動産所得が赤字とは「不動産収入-経費」がマイナスになることですが、そもそも経営が赤字では不動産投資の意味がありません。そこで出てくるのが、現金の移動による赤字ではなく、帳簿上の赤字を作ることです。この部分はあとの減価償却で解説します。

確定申告で経費計上する

「不動産所得=収入金額―必要経費」となるので、必要経費で計上できる金額が多ければ、収入金額より差し引ける分も多くなります。したがって、不動産所得が少なくなることで節税の効果が出てくるのです。では、どんなものが経費の対象になるのでしょうか。

経費の対象になるもの(個人の場合、法人の場合)

個人の場合

  • 入居者募集のための広告宣伝費
  • 減価償却費
  • 収入印紙代
  • 修繕費
  • 損害保険料
  • 共用部の水道光熱費
  • 不動産会社への管理手数料
  • ローンの金利部分
  • 固定資産税、都市計画税
  • 不動産取得税
  • 登録免許税、司法書士登記手数料
  • 事業税
  • 接待費・交際費

法人の場合

上記の項目に加えて、主に下記も経費の対象になります。

  • 役員報酬
  • 退職金
  • 法人保険
  • 赤字の繰り越し
  • 交通費
  • 自宅の社宅化

経費の対象となるものは、個人と法人で変わってきます。個人の場合は、不動産収入を得るために最低限必要であった経費に限られています。それに比べて法人は、法人が行った業務的な行為は、ほぼ経費にできます。例えば家族を役員にし、役員報酬や退職金を支払う、また個人では計上できない交通費も該当します。したがって、法人化することで経費計上できる範囲が広くなるので、個人と比べて節税効果があります。しかし、会社設立費用や運営コストも掛かるので、将来的に事業拡大等を予定している場合にお勧めです。

節税のポイントは、減価償却費

減価償却とは、建物やその付属の設備など、減価償却資産を法定上定められた方法で金額を算定し、その耐用年数にわたって必要経費として計上することです。減価償却費は原則定額法で計算します。定額法とは、毎年の減価償却費が同額になるように計算する方法です。減価償却費を求める式は下記になります。

減価償却費=取得価額×定額法の償却率
償却率は、建物の構造や用途ごとに耐用年数が設定されており、その予め決まった値を用います。尚、減価償却できる資産は、建物・建物付属施設・構築物・機械装置などになり、土地は減価償却の対象になりません。定額法によって算出した減価償却費も経費として計上することで、不動産所得を抑えることができ節税となるのです。

どこまで節税可能か? 節税シミュレーション

ここでは不動産投資による節税シミュレーションを紹介します。

〔想定条件〕
給与収入700万円、マンション購入価格3,000万円、家賃収入年間150万円、年間経費(170万円or200万円、減価償却費66万円含む)

所得税の計算
○不動産投資を行っていない場合
課税所得金額 700万円―228万円(控除額)=472万円
所得税 4,720,000円×20%(税率)-427,500円(控除額)=516,500円

○不動産投資を行っている場合 (家賃収入150万円ー年間経費170万円=-20万円の赤字の場合)
課税所得金額 700万円―228万円(控除額)-20万円=452万円
所得税 4,520,000万円×20%(税率)-427,500円(控除額)=476,500円

○不動産投資を行っている場合 (家賃収入150万円ー年間経費200万円=-50万円の赤字の場合)
課税所得金額 700万円―228万円(控除額)-50万円=422万円
所得税 4,220,000万円×20%(税率)-427,500円(控除額)=416,500円

シミュレーションの結果、20万円の赤字を計上した場合は、年間で4万円の節税、50万円の赤字を計上した場合は年間10万円の節税となります。

不動産投資で節税するときのポイント

不動産投資節税のポイント

ここからは、不動産投資で節税する時のポイントを3つ紹介します。不動産投資は闇雲に行うものではなく、先々を見据える事や、税金に対しての理解、そして節税のみに執着しないことが重要となってきます。

税制をよく理解する

不動産投資には、さまざまな税金が関連してきます。購入時には不動産取得税や登録免許税、経営開始後は固定費として、固定資産税や都市計画税、家賃収入には所得税や住民税、また一定の事業規模の場合は個人事業税も掛かります。尚、法人化している場合は法人税、法人事業税、法人住民税となります。不動産投資は、投資額と年間家賃収入から計算する利回りに目が行きがちですが、経営時に掛かる税金もしっかりと頭にいれておきます。

将来を見据えて、需要な見込めそうな物件に投資する

不動産投資は、入居者が見込めるエリアでなければ経営は成り立ちません。不動産投資最大の敵は、空室対策です。空室を作らないことが経営成功の近道なのです。投資物件を購入前に、駅近はもちろんのこと、周辺の人通りの量や賃貸物件の募集状況など需要のリサーチや、コンビニやスーパーなど生活利便性の高い施設があるかなど、チェックするのもお勧めです。尚、アパート投資の場合は、周辺の需要に合わせた間取りにすることが重要で、例えば学生が多い街であればワンルームに、人気学区でファミリー世帯が多ければ、2~3DK中心にするなど、長期間にわたり需要が見込めるようにします。

節税のみを目的としない

最後に、節税のみを目的としない事です。不動産投資の目的は、あくまで収益を上げることです。節税だけの為に、キャッシュフローの収支もマイナスとすると弊害もでてきます。例えば自己居住用に購入する住宅ローンが組みにくくなったり、不動産投資を拡大しようと新規融資を受けようにも、投資物件の収支が赤字になっているので、融資が受けにくくなるのです。不動産投資での節税は、税理士と相談しながら行うのが賢明です。不動産投資は、「節税ができるから」始めるのではなく、「節税もできる」というスタンスで挑むのが重要です。

相続時も節税になる

相続時も節税になる

不動産投資でマンションやアパートを所有することは、相続時にも節税になります。その相続時に発生する節税の仕組みを解説します。

相続税とは

相続とは、人が亡くなった(被相続人)時に、相続財産をその人の配偶者や子供(相続人)に受け継ぐことを言います。相続が発生し、相続財産が一定額以上あると、財産を相続した相続人には「相続税」が掛かります。

投資不動産の建物と敷地の評価は

建物の評価=建物の固定資産税評価額×(1-0.3(借家権割合))
アパート・マンションは不動産として相続税の課税対象です。アパート・マンションの建物評価額は、貸家の場合30%の評価減が設けられています。もともと相続時の建物評価額は、建築代金の60%~70%で評価されています。そこに更に30%の評価減が加わるため、総じて相続税の評価額は建築代金の約50%になります。

次に、アパート・マンションの敷地評価についてです。
土地の評価=土地の自用地の評価額×{1-(借地権割合×0.3(借家権割合))}
借地権割合は、地域によって異なりますが、概ね60%~70%の地域が多くなります。したがって、上記算出式に当てはめると、借地権割合に借家権割合をかけた分だけ評価が下がります。例えば、借地権割合が60%の場合は、更地評価に比べて約18%の評価減、借地権割合が70%の場合は、更地評価に比べて21%の評価減になります。

小規模宅地の減額特例とは

小規模宅地の減額とは、適用対象面積が200㎡までの部分で、評価額が50%減額されます。主な適用の条件は、被相続人の不動産貸付事業の用に供された宅地で、被相続人の事業を引き継ぎ、申告期限まで引き続き貸付事業を営んでいる親族が取得していることなどです。

相続税節税シミュレーション

預金1億円を、アパート・マンションにした場合の評価は?
(条件) 敷地の広さは200㎡、借地権割合 70%、借家権割合 30%とする

アパート・マンションの時価は、1億円
〔建物:5,000万円 土地:5,000万円〕

相続税評価額は、30%の評価減になるので、7,000万円(不動産購入で3,000万円評価減)
〔建物:固定資産税評価額は建築費の60%として3,000万円、土地:相続税評価額は実勢価格の80%で4,000万円〕

アパート・マンションで賃貸した場合は、更に評価減となり、5,260万円(更に1,740万円評価減)
〔建物:貸家評価は2,100万円 土地:貸家建付地の評価は3,160万円〕

小規模宅地の特例を適用すると、更に評価減となり3,680万円になります(更に1,580万円評価減)
〔建物:2,100万円 土地:評価額は更に50%減額となり1,580万円〕

アパート・マンションの購入で6,320万円の評価減が受けられるので、総じて相続税の節税になります。

その他不動産投資との節税比較

その他不動産投資との節税比較

ここではその他の節税対策との比較をしていきます。

月極駐車場、コインパーキング投資との比較

月極駐車場は、不動産投資として人気がありますが、節税対策にはなりません。理由は宅地ではないので固定資産税の軽減がないからです。コインパーキングに関しても同様です。駐車場経営は、節税というよりは投資で収益を多く上げたい場合にお勧めです。尚、駐車場の場合でも、アスファルト舗装をすると小規模宅地の特例が受けられるので、相続の際は節税になる場合もあります。

民泊との比較

民泊を経営するにあたり、経費として認められるものがあるので一定の節税効果があります。経費となるのは、固定資産税・都市計画税、掃除用品代やハウスクリーニング代、ベッドやテレビなどの備品、クロス張替えなどの修繕費、通信設備(WiFiなど)、宿泊者に提供する飲食費、水道光熱費、運営会社への手数料などになります。また、減価償却もできるので残存償却期間中は、経費として計上できるので、総じて節税効果はあります。しかし、民泊での所得は雑所得となるので、損益通算はできないので注意が必要です。

イデコ・寄付金控除・ふるさと納税との比較

イデコで積み立てた掛け金は、毎年全額が所得控除の対象となり、所得税と住民税が軽減されます。イデコでの節税額は、年収や掛け金によって異なりますが、長期的に大きな節税効果があります。寄付金控除やふるさと納税は、所得控除を受けることができるので節税効果があります。尚、寄付金控除は町内会や宗教法人等への寄付など、対象にならないものもあるので注意が必要です。

まとめ

不動産投資で節税するポイントは、損益通算・確定申告・減価償却であることがわかりました。これらを活用することで賢く節税ができるのです。しかし、不動産投資の本来の目的は、長期的に収益を上げることにあります。不動産投資をしていたら、節税もできてしまったという位のスタンスが丁度良いです。また、節税は一人で行わず税理士等に相談し、納税の義務を果たしながら正しく行っていきましょう。