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(有)タリア商事 代表 榎本大悟 保有資格 宅地建物取引士・空き家対策相談員 免許番号 千葉県知事免許(12)第4586号プロフィール詳細はこちら |
不動産投資をはじめる場合は、銀行から融資を受けるために、事前に頭金の準備が必要なことも多いですよね。
実際に頭金をいくら貯めれば良いのか、気になっている人も多いのではないでしょうか。さらに、手持ち資金が少ない人は、物件購入の頭金をなるべく安く抑えたいとも考えているはず。
とはいえ、頭金の不動産物件に対する具体的な割合は、3割とも10~20%とも言われていてはっきりしません。
そこで、この記事では不動産投資の頭金を決めるために大切なことや、頭金なしのメリットについてわかりやすく解説します。これから、不動産投資で成功したいと考えている人は、ぜひこの記事をご覧ください。
この記事で分かること
- 頭金の相場を決める3つの要因について
- 頭金なしの購入で投資利益を出しやすい理由
- 不動産投資で頭金を決める際に考えるべきこと
- どういった場合に頭金なしを受け入れてもらえるのか
- 頭金を減らす以外に不動産購入の経費を落とす方法
目次
不動産投資の一般的な頭金の相場は?
不動産投資の頭金の相場は、3割という意見が多いです。つまり、5,000万円の不動産を購入する場合は、1,500万円です。または、10~20%という少なめの意見もあります。これは、ここ最近の日本のマイナス金利政策の影響もあるのではないでしょうか。
いずれにしても、不動産投資の頭金の相場にはいろいろな意見があります。つまり結局は、個人や社会を取り巻く状況によります。
そもそも頭金とは、購入予定の不動産の価格から借入れをするローンの額を差引いた費用です。頭金が多いほどローンも少なくなり、月々の返済額を減らすことができます。つまり、頭金の額は、毎月のローンの返済能力といった個人の状況や、返済能力をチェックする銀行側の思惑に大きく左右されるのです。
頭金の相場に影響があるものは
- 購入者の属性
- 借金の有無
- 購入予定の物件の状況
そこで、ここでは頭金に影響する購入者の属性や条件について整理していきます。
※「属性」という言葉は主に不動産業者や行員間において購入者のレベルや状態を表現する
場合に使われる言葉です
不動産投資における購入者の属性
不動産投資に影響する購入者の属性とは、勤務先や年収、過去の借金歴など、社会的・経済的な背景のことです。属性が低いとか属性が高いなどと表現することもあります。いわゆる、属性が低い人は定職がなく年収も低い人。対して、属性が高い人は会社役員、大手企業勤務、公務員など安定した収入がある人です。
購入者の属性は主に、希望する頭金で銀行側がローンを組んでくれるのかに影響します。属性が高ければ、頭金が少なくても比較的にローンの審査に通りやすいでしょう。
借金の有無
購入時のローンの他に、借金の有無や程度も必要な頭金を決めるのに重要な要素です。理由は、次の2点です。
- ローンの審査を行う銀行が不動産購入者の借金の有無もチェックするから
- 不動産用のローンを組むと、現在のローンに加えて毎月の返済額が増えるか
つまり、銀行側と購入者側の都合のことを考えて、頭金を設定する必要があります。現在もすでに多額のローンを抱えている場合は、頭金を増やして月々の返済額の負担を減らすように心がけていきましょう。
購入予定の物件の状況
物件の状況の中でも利回りは、特に頭金への影響が大きい要素です。利回りとは、購入しようと思っている物件から得られる利益と購入した不動産の割合。ここでは簡単に計算できる表面利回りを紹介します。
表面利回り=年間の家賃収入÷不動産の購入価格
計算式からも分かるように、利益が大きければ利回りが高く、利益が小さければ利回りが低くなります。
利回りが高いと、毎月入ってくる家賃収入も大きくなるため、ローンの返済額を差引いても黒字になり、不動産投資がうまくいきます。
対して、利回りが低いと家賃収入よりも毎月のローン返済額が上回ってしまいます。結果的に、赤字になり投資が失敗してしまう可能性もあるのです。
つまり、大きな利回りが見込めない場合は、なるべく頭金を増やして毎月の返済額を減らす努力も必要でしょう。
次に、頭金を0円にするメリットを解説します。
不動産投資の利回りについては「不動産投資の利回りについて|平均、計算方法、最低ラインは?」で詳しく解説しています。
不動産投資で頭金なしのメリット
頭金0円で投資物件の全ての資金を、金融機関の融資で賄うことをフルローンといいます。リスクが大きく危険なように思えてしまうフルローンですが、メリットもあります。
フルローンのメリットは、以下の通りです。
- レバレッジ効果
- 機会損失を防ぐ
- リスクに備えられる
ひとつづつ解説します。
レバレッジ効果
投資におけるレバレッジ効果というのは、少ない資金で大きな利益を生み出すことを言います。例えば、2,900万円の不動産を購入する場合に、次の2パターンを想定して考えてみましょう。
頭金500万円の場合
500万円(頭金)+100万円(その他諸経費)+2,400万円(ローン)=3,000万円
頭金0円フルローン場合
0円(頭金)+100万円(その他諸経費)+2,900万円(ローン)=3,000万円
以上の2パターンについてレバレッジを計算すると、次のようになります。
頭金500万円のレバレッジ
3,000万円÷600万円=レバレッジ5倍
頭金0円(フルローン)のレバレッジ
3000万円÷100万円=レバレッジ30倍
フルローンの場合は、自己の投資資金の30倍もの金額で投資ができ、その分リターンも多くなります。
つまり、大きな資金で投資できない場合や、残った資金を他の投資に回すなどして、効率的な運用をしたい人にとってメリットが大きいのです。
機会損失を防ぐ
機会損失というのは、投資できなかったことで、本来は生み出せたはずの利益が出なかったことを言います。つまり、投資の機会を逃すことで、利益を儲けそこなった状態です。
不動産投資の機会損失を考える場合、頭金を準備するまでの時間も投資の機会だと捉えます。フルローンで不動産投資をすることで、頭金を準備する時間も必要なくなります。結果的に、機会損失を防ぐことになるでしょう。
すぐには大きな金額を準備できない人に、メリットがあります。
リスクに備えられる
不動産投資の場合のリスクとして、物件購入後の維持管理費や、物件の修理などにかかる想定外の出費があります。頭金を0円にすることで、頭金分のお金を不動産投資のリスクの備えとして蓄えておくことができます。
修理などの思わぬ出費が予想される古い建物を購入する場合に、メリットがあるといえるでしょう。
不動産投資で頭金を計算する場合に考えるべきこと
不動産投資で頭金を計算する場合は、はじめの項目でお伝えした属性や条件の他に、次のことを考える必要があります。
- キャッシュフロー
- 返済比率
- 将来の金利
- 融資期間
キャッシュフロー
不動産投資のキャッシュフローとは、不動産の家賃などから得られた利益からローンやその他諸経費を差し引いた残りの資金です。
不動産を運営することで得られる収入が、毎月の返済とその他の諸経費の合計を上回るように、頭金を調整する必要があります。
返済比率
返済比率は次のように計算します。
返済比率=毎月のローン返済額÷満室時の毎月の家賃収入×100
たとえば、満室時の家賃収入が毎月80万円で、毎月の返済が24万円だとすると次のように計算。
24万円÷80万円×100=30%
数字が小さくなるほど、不動産投資の利益も大きくなります。一般的に言われている、適正な返済比率は40~50%です。
満室時の毎月の家賃収入は、シミュレーションして割り出して、返済比率から適した頭金を計算してみるといいでしょう。返済比率が高くなる場合は、頭金を増やすことも考えてみるのがおすすめです。
▼将来の金利
将来的に金利の上昇が見込まれる場合、ローンの元金を減らすために頭金を多く払った方が、不動産投資には有利になります。なぜなら、金利は元金にかかるため、金利が高くなっても、元金が少なければ返済額も抑えられるからです。
現在は超低金利ですが、今後はどうなるか分かりません。日本政府の金融政策の動向もチェックしておきましょう。
▼融資期間
融資期間が短いと毎月の返済額も大きくなるため、頭金を多めに払い、できる限り返済額を抑えることも考慮したいところ。もしくは、融資期間が長く余裕があれば毎月の返済額も低く抑えられるため、頭金を抑えてレバレッジを効かせたり、現金を温存して将来のリスクに備える戦略も考えらえます。
ただし、融資期間は長ければ良いものでもありません。融資期間を見積もる場合は、次の2点を考えるといいです。
- 現在の年齢
- 今後の人生設計
現在の年齢が若ければ、融資期間を長めにとっても問題ありませんが、年齢が定年間近の場合は、返済期間を短くする必要があります。
また、人生設計を考える場合は、自分がいつまでに返済を終えたいのかも考慮するといいでしょう。なぜなら、返済を終えたらローンの返済金が無くなる分、収入も増えることになるからです。
収入が増え分を、他のことに当てられます。たとえば、子どもの教育資金や老後の生活、新しい投資を始めるなど、今後の人生を一度、俯瞰してみるといいでしょう。
不動産投資で「頭金なし」は必ずしも危険ではない
頭金0円は、ローンの返済額が大きくなることから、危険だとみなされがちです。確かに、その場の利益を追い求めた上でのフルローンは危険です。
とはいえ、必ずしも危険ではない側面もあります。なぜなら、不動産投資は住宅ローンとは違い、投資にとる利益を見込んだうえで成功するか失敗するかが決まるからです。
つまり、頭金が0円でもキャッシュフローが十分にプラスであれば問題ありません。そして、キャッシュフローをプラスにするためには、返済比率や稼働率といった不動産の収益性を考えることも大切です。
不動産の収益性を正確に見込むためにも、投資の対象物件の調査や分析も丁寧に行いたいところ。さらに、実際に不動産を運営して収益性を高めるためには、物件の広告や家賃設定、リフォームなども考える必要があります。
不動産投資で頭金なしにできる条件とは
実際のところ、不動産投資の頭金なしでローンを受けるのは簡単なことではありません。頭金なしでローンを受けられる条件として次が挙げれます。
- 投資対象が高利回り物件
- 土地はすでに所有している
- 潤沢な手持ち資産(いわゆる、お金持ちや資産家)
- 大企業や公務員などで高給かつ安定している
もし、資産家でもなく、高い属性も有していない場合は、投資対象とする物件の質を高めることで、その他の条件をカバーできることもあります。その場合、良い物件を見つけるために、労力と時間を割くことも大切ですね。
ここまででお伝えした頭金は、不動産投資の初期費用を減らすことで手持ちの資金(自己資金)を温存できるというメリットがあります。とはいえ、先ほどの条件でもお伝えした通りに、頭金を低く抑えるのも人によっては限界があります。
そこで、以降では頭金以外の初期費用を抑えて自己資金を温存することについて考えてみましょう。まずは、頭金以外の初期費用を洗い出しましょう。
不動産投資における頭金と自己資金の違い
頭金と一緒に捉えがちな自己資金ですが、両者は別物です。自己資金とは、物件を購入する際の頭金(ローンの金額を除いた物件価格)と初期費用(物件価格以外に掛かる諸経費)の総額のことを言います。つまり、頭金は自己資金の一部なのです。→ たとえば物件購入にかかる初期費用には次のようなものがあります。
- 仲介手数料
- 司法書士報酬
- 不動産登記費用
- 火災保険料
- 地震保険
- 不動産取得税
- 登録免許税
- 印紙税
- 消費税(建物のみ課税対象、個人間売買においては非課税)
以上が初期費用としてかかる自己資金です。残りの資金を、不動産の運営費として使うことになります。
ところで、頭金以外の初期費用は、どれくらいが妥当なのでしょうか。次に、初期費用の適正な金額を解説します。
不動産購入に要する諸経費と不動産価格の割合は?
前項でお伝えした、自己資金に含まれる頭金以外の諸経費の相場は、購入物件の7~8%だと言われています。不動産仲介業者を介さない場合は、4~5%です。売主から直接買うと、かなりお得になることがわかります。
とはいえ、現実的には不動産投資会社を介して取引を行うことが多いです。そこで、次に不動産投資会社を介した場合の、初期費用を抑える方法についてお伝えします。
ポイント
、「投資用物件の購入について、不動産会社に依頼することで手数料は発生します。一方で売買の取りまとめ業務、契約書の作成、契約時及び契約後のトラブル回避等、専門家に依頼することのメリットもありますので、金銭面だけでは無く総合的にご検討頂くことをお勧め致します。」
頭金以外で不動産投資の初期費用を抑える
頭金以外の初期費用を抑える場合にまず考えられるのが、仲介手数料や司法書士報酬です。なるべく自己資金を抑えたい場合、仲介する不動産投資会社や司法書士事務所と交渉するか、別のところに依頼する方法があります。
保険料については、保険会社や物件の造り、築年数なども影響してくるでしょう。保険料は、不動産といった大きな買い物の場合、初期費用としては小さな数字で軽視しがち。とはいえ、不動産運営中も支払うものなので、運営費用を抑えるためにも慎重に選びたいところです。
この記事のまとめ
不動産投資に適した頭金というのは、個人の状況や物件の条件によって決まるため、一律に3割と言い切ることはできません。
まずは、属性や貯蓄、物件の状況などにより適切な頭金で不動産投資用のローンを組んでみましょう。
金融機関から十分な信用を得られそうな場合は、フルローンを相談してみるのもいいでしょう。フルローンは、不動産購入後のキャッシュフローや返済比率、稼働率を考慮すれば、危険なことはありません。
現状に合わせた頭金と資金計画で、不動産投資を成功させましょう。
不動産投資ローンの借入限度額などについては「不動産投資ローンの借入限度額は?住宅ローンとの違い」で詳しく解説しています。